総指伸筋といえば四瀆(しとく)という三焦経のツボを思い出す。
学生時代、このツボを正確に取穴(しゅけつ)する為、仲間内でああでもない、こうでもない…と、あれこれ試した懐かしい時間。
授業の中で『ここだよ!』と教えられ、紙の上では正解を出せるのだが、実際の所、三次元の人の身体では……?
授業を離れ、実践になると案外全ての生徒が曖昧な事は多いものだ。
解らない自分への苛立ちと、自分だけが出来ない訳ではない安堵感…その不安定な矛盾。
どうしたら解決出来るのだろうか?探りながら辿り着いたのが、当たり前の『運動検査』。
残念ながら僕らの時代、経絡の授業中に解剖学やら運動学が活きる時間はあまり無かった。
逆に、何故活かさないのだろう?という逆転の発想へと導いてくれた思い出深いツボ。それこそが四瀆(しとく)。
総指伸筋 小指伸筋という筋肉を腕が太くても細くても、長くても短くても、起始停止から骨の触察を試みてはその収縮を探る。指を動かすかすかな繊細さをどのように捉えるのか?言葉では説明が出来ない領域というものを知る。
なんてことのない技術なのだが、未熟な学生には高い壁であり、その高さこそが、神秘の世界を魅せてくれる唯一の扉。
プロへ向かい始める自分が妙に気恥ずかしく、おこがましくもその瞬間『鍼の神様』に選ばれたかのような優越感に浸かり、選ばし者の領域と自惚れたものだ。
(後年、トリガーポイントの仲間に混じり、その流派の高いスキルに、いかに自己満足の運動検査であったかを知り、上には上がいるものだと知らされた。)
ヨガ界自体の多様性、多面性が顕著になっている。ただリードが出来れば良い、アーサナがとれたなら良い時代から、
"貴方だけのsomething"が確実に求められている。
『ヨガの神様』の囁きに包まれるのか、包まれないかも、貴方次第だ。